はじめに
皆さんは、「乾燥」と聞いて何をイメージするでしょうか。
とても身近な存在だけに、「濡れたものを乾かすだけじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、乾燥はもっと奥深さがあるんです。
日常生活だけでなく、産業分野でも広く活用されている乾燥。
あなたの知らないところにも、乾燥が深く関わっています。
私たち大川原製作所は、化学・食品・医薬・環境など多くの分野に乾燥機を提供しているメーカーです。
そんな乾燥機のエキスパートである私たちが、乾燥のキホンについてやさしく解説します。
この記事を読めば、乾燥について一歩も二歩も踏み込んだ知識を得られます。ぜひ日々の生活や仕事に、活用してみてくださいね。
乾燥とは
まずは、乾燥という現象についておさらいしておきましょう。
簡単に言ってしまえば、「濡れたものを乾かすこと」こそが乾燥ですが、ここでもう少し踏み込んで詳しく定義していきます。
改めて乾燥とは、「湿った物体に含まれる液体を蒸発させ、乾燥したものを得ること」を指します。
とはいえ、何か特別なことをしているわけではありません。
洗濯物を干す、髪の毛をヘアドライヤーで乾かすなど、乾燥は私たちが生活の中で自然と行っていることです。
段階を追って説明すると、
-
- 1:水分の蒸発に必要な熱を、被乾燥物(対象物)へ与える
- 2:水を蒸気に変える
- 3:発生した蒸気をまわりの空気が受け入れる
という一連の現象が「乾燥」です。
ここで現象の理解を深めるため、濡れたタオルを例に、乾燥の過程を追いかけてみましょう。
タオルを加熱すると、一定以上の熱が与えられた段階で水の状態変化が生じ、蒸気となります。
しかし、蒸気となるだけでは乾燥できず、発生した蒸気をまわりの空気が受け入れることが必要です。
どういうことでしょうか?
たとえば、湿度100%の環境下を考えてみましょう。この場合、空気中の水分は飽和しています。
この状況でどれだけタオルを温めても、蒸発した水分の行き場がありません。
湿度の高い梅雨時期を想像してみると、タオルが乾きにくいことが理解しやすいのではないでしょうか。
いつまでもタオルは湿ったままの状態ですよね。
このように、タオルから周りの空気へと蒸気が移動して初めて、乾燥が実現できるのです。
つまり、暖かく乾いた環境下であれば、すばやく乾燥させることが可能です。
日常のさまざまな場面で活用される乾燥技術
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実は日常生活から産業分野までさまざまな場面で活用されている乾燥ですが、大きく分けて3つのメリットがあります。
- ・軽量化
- ・保存期間の延長
- ・品質の安定化
軽量化と保存期間の延長については、イメージがしやすいのではないでしょうか。
たとえば荷物を送る際、重くなればなるほど配送料も高くなります。
生よりも乾物の方が、輸送コストを削減できることは容易に想像できますね。
たとえばインスタントコーヒーは、コーヒーを乾燥させることで作られています。
コーヒー1杯150mL=150gとした場合、その1杯を作るのに必要なインスタントコーヒー粉末はスプーン1杯、約2gです。
つまり重量比では約2.6%に軽量化でき、輸送コストを大幅に削減できることが分かります。
加えて、特に食品においては、水分が多いものほど腐りやすいという特徴があります。
そんな時も、乾燥によって食品の保存期間を延長できます。
たとえばドライフルーツは、果物を乾燥することで作られます。
果物のように、水分が多く含まれる食品の保存期間は短いです。
しかし、乾燥により水分量を減少させると、微生物の繁殖が抑えられ長期保存が可能となります。
さらに、産業界においては、製品の品質安定化を目的として乾燥が活用されています。
たとえば樹脂やプラスチックは、製品の水分が多いと品質の低下を引き起こすため、乾燥が必須です。
また、精密機器向けの素材(酸化チタンやセラミック、電池材料など)は純度が求められるため、不純物除去のために洗浄を行います。
洗浄後に元の状態(粉体)へと戻すためには、乾燥の工程が必要になります。
このように乾燥技術は、日常生活から産業分野まで幅広く活用されている、私たちにとって欠かせない存在なのです。
乾燥機の必要性
これまでの説明で、乾燥が食品を中心に多くの分野で必要不可欠な存在であることはお分かりいただけたかと思います。
ここからは、どのようにして物体を乾燥させれば良いのか、具体的な乾燥方法についてご説明します。
分かりやすくするために、皆さんが日常的に行っている衣類の乾燥を例に考えてみましょう。
洗濯後の衣類を乾燥させたい時、どのような方法を取るでしょうか?
大きくは、天日干しと衣類乾燥機の2種類に分けられます。
天日干し
洗濯物を乾かす方法といえば、天日干しが代表的ですよね。
特別な設備も必要とせず、ただ外に干すだけで手っ取り早く乾燥できる反面、天気・季節など外的環境によって乾燥具合が大きく変わります。
雨の日になると、干すことすらできません。
加えて、一つひとつの洗濯物を干すための場所も必要です。
このように天日干しは、毎日安定的に運用していくことが難しいといえます。
衣類乾燥機
そんな天日干しの悩みを解決するために開発されたのが、衣類乾燥機です。
最近ではドラム式洗濯乾燥機が普及したことで、自宅で手軽に洗濯物を乾燥できるようになりました。
衣類乾燥機は、温度と時間を自由に設定できるため、外的環境によらず安定した品質で乾燥可能です。
加えて、すべての洗濯物をまとめて乾燥できるため、場所をとらない点もメリットの一つといえます。
ここで両者の違いを、「洗濯物」ではなく「ドライフルーツを工業的に大量生産したい」という場面に置き換えてみてください。すると、
- ・天日干しでは安定した生産が難しい
- ・条件次第では乾燥に時間を要してしまい、腐らせてしまう可能性もある
そんなことが考えられるのではないでしょうか。
このように、産業分野においても乾燥は重要な意味を持っており、安定した品質で製品を生産し続けるためには乾燥機が欠かせません。
産業分野で用いられる乾燥機には、対象とする物体の特徴に合わせてさまざまな種類が存在します。
それらの特徴を正しく理解することで、最適な乾燥機を選ぶことができます。
一つひとつ、順番に見ていきましょう。
乾燥機を構成する要素とは?
皆さんは、乾燥機がどのような作りになっているのかをご存じでしょうか。
ここで再び、衣類乾燥機を例に説明します。
まず、乾燥させるためには、物体に熱を与える必要があります。
衣類乾燥機の場合は、熱風により洗濯物を乾かします。
さらに、熱を効率よく洗濯物へ伝えるため、回転機構を設けています。
そうすることで、短時間で衣類を乾燥させることができるのです。
もちろん、縦型やドラム式などのちがいで乾燥効率にも差は出てきますが、
衣類乾燥機においては概ね「熱風 × 回転機構」が確立されています。
つまりこの「熱風 × 回転機構」という組合せは、衣類を乾燥するために最適化された構成だといえます。
一方、産業分野においては、対象物が多岐にわたります。
そのため、乾燥させたいものは何か、どのような乾燥品を得たいかを明確にすることが重要です。
そのうえで、「熱の与え方」と「熱を効率よく与える機構」を考え、最適な構成の乾燥機を選ぶことが求められます。
次回は、産業分野で使用されている乾燥機の種類についてご紹介します。
まとめ
この記事では、産業界においてとても重要な意味を持つ乾燥の基礎と、乾燥機の必要性について詳しく解説しました。
目的に合った乾燥機を正しく選ぶためには、以下の3点に気を付けると良いでしょう。
- ・何を、どのように乾燥させたいのか
- ・どのような熱を与えるのか(熱の種類)
- ・どのようにして熱を効率よく与えるか(熱を伝える機構)
つまり、乾燥の目的を明確にし、そのうえで最適な乾燥機構を選ぶというステップが重要です。
しかし、既製品をそのまま適用するだけでは、狙った乾燥状態が得られない可能性もあります。
場合によっては、オーダーメイドの乾燥機を作る必要も出てくるでしょう。
そんな時は、乾燥のエキスパートである私たちにご相談ください。
大川原製作所は、お客様の要望に応えることで、食品・化学・医薬品などさまざまなメーカー様の生産を支え続けています。
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