はじめに
前回は、乾燥のキホンと乾燥機の必要性について、日常生活で馴染みのある衣類乾燥機を例にご紹介しました。
一方、産業分野では、対象物が多岐にわたります。
そのため、乾燥の目的を明確にし、そのうえで最適な乾燥機を選ぶというステップが重要となります。
この記事では、熱の伝え方の種類について説明した後、産業分野で使用されている乾燥機の種類についてご紹介します。
熱の伝え方(加熱方法)の種類
改めて、衣類乾燥機の例を思い出してみましょう。
衣類乾燥機は、熱風を与えることで洗濯物を乾かします。
ここで、熱風を通して熱が伝わることを「対流伝熱」と呼びます。
熱の伝わり方、いわゆる加熱方法には、対流伝熱を含めて大きく4つの種類があります。
それは、対流伝熱、伝導伝熱、輻射伝熱、マイクロ波加熱です。
これらは、いずれも日常生活でよく目にする現象です。
たとえば冬場に、暖かいリビングで過ごしている状況を想像してみてください。
このとき、床に座りホットカーペットでくつろいでいれば、「伝導伝熱」によって温まることができます。
エアコンを使って暖かい風を送りこめば、暖かい空気と冷たい空気の循環によってリビング全体が均一に温まります。
これは、空気の「対流伝熱」によるものです。
一方で、ストーブの火でリビングが暖かくなるのは「輻射伝熱」のおかげです。
最後の「マイクロ波加熱」は、電子レンジで物を温めるときに使われています。
このように、いずれも日常生活でよく目にする現象ですが、実は産業分野でもさまざまな形で活用されていることをご存知でしたか?
ここからは、物を乾燥させたいときに一つひとつの加熱方法がどのように活用されているのか、
またそれらを搭載した乾燥機にはどのような種類があるのかについて解説していきます。
加熱方法による乾燥機の分類
対流伝熱
対流伝熱は、液体や空気などが移動することで熱を伝える方法です。
これまで何度かご紹介してきた衣類乾燥機はもちろん、
エアコンで部屋を暖めたり、ドライヤーで髪の毛を乾かしたりするのも対流伝熱を活かした方法です。
対流伝熱を活用した乾燥機には、コンベア式乾燥機や、流動層乾燥機などが挙げられます。
これらの乾燥機では、ファンなどの装置によって強制的に熱風を送り込むことで加熱を行うため、材料全体を均一に乾燥できます。
一方、加熱に伴い材料が高温の空気に触れるため、酸化が進行する恐れがあります。
そのため、乾燥させる材料に合わせた乾燥機の選定が必要です。
対流伝熱の例:流動層乾燥機
流動層乾燥機は、対流伝熱乾燥機の一種です。
材料を金網や多孔板上へ層状に積み、熱風で吹き上げて材料を浮遊させながら乾燥させる機械です。
熱効率が極めて高く、短時間で乾燥できることが特長です。
付着性が低く、含水率が比較的低い粉粒状材料の乾燥に適しています。
伝導伝熱
伝導伝熱は、物と物が接したとき、その接触面から熱が伝わる方法です。
ホットカーペットや湯たんぽ、床暖房など、加熱されたものに直接触れるのは伝導伝熱を活かした方法です。
伝導伝熱乾燥機には、「ジャケット」と呼ばれる2層構造の空間があります。
そこに熱媒体を流すことで乾燥機壁面を温め、壁面を介して物体に熱を伝えます。
具体的には、リボン混合乾燥機などが挙げられます。
熱効率が高いため、エネルギー消費が少ないことが特長です。
一方、材料の厚みや形状により、乾燥が均一に進まない可能性があります。
複雑な形状や大きなものなどでは、適用が難しいでしょう。
伝導伝熱の例:円錐型混合乾燥装置「リボコーン」
円錐型混合乾燥装置「リボコーン」は、装置の筐体(ジャケット)部分を蒸気などで温め、その伝導伝熱を使って物体を加熱する機械です。
内部でリボン回転を行うことで、その循環により効率よく材料を乾燥させることができます。
粉粒状やフレーク状の物体など、幅広い材料に適応しています。
輻射伝熱
輻射伝熱は、加熱した物体から出る熱が、電磁波(赤外線)によって輻射されることで熱が伝わる方法です。
直接触れていないにも関わらず、空気などを介さずとも温かさを感じられるものが該当します。
太陽やストーブ、たき火などがイメージしやすいですね。
輻射伝熱を活用した乾燥機には、赤外線ヒーターなどが挙げられます。
媒介するものを必要とせず、熱が直接材料に作用するため、短時間での乾燥が可能です。
酸化など、劣化しやすいものにも適していると言われています。
しかし、輻射伝熱の伝わりやすさは表面からの熱伝導によるため、厚みのある材料では加熱効果が低下する恐れがあります。
工業分野では、自動車部品の塗装の乾燥、プリント基板の乾燥、
セラミックタイル・電子部品用セラミック基板の乾燥などに用いられています。
マイクロ波加熱
マイクロ波加熱は、電磁波(マイクロ波)により、分子レベルで熱運動を活性化させ、直接物体を加熱する方法です。
電磁波を使うという点では輻射伝熱と近いですが、別の物体から熱が伝わるのではなく、
電磁波(マイクロ波)によって直接物体が温められます。
具体例としては、電子レンジがとても有名ですよね。
マイクロ波加熱のみを活用した乾燥機は少ないですが、
既存乾燥機の乾燥性能をアップさせるために、マイクロ波を搭載しているケースがあります。
マイクロ波加熱は、物の内部(分子レベル)から温めるため、他の3つの方法と比較して非常に短時間で乾燥可能です。
物体に含まれる水分に反応し、その部分のみを集中的に加熱するため、エネルギー効率も高いといえます。
しかしその反面、部分的な過熱や焦げのリスクがあります。
加えて、そこまで汎用的な技術ではないため、他の乾燥方法と比較して初期コストが高くなる傾向にあります。
マイクロ波加熱の例:マイクロ波加熱リボコーン
マイクロ波加熱リボコーンは、伝導伝熱乾燥機であるリボコーンに、マイクロ波加熱の機能を追加した装置です。
より物体を直接的に加熱できるため、伝導熱のみでは避けられなかった物体の凝集や熱収縮を抑制できます。
伝導伝熱+マイクロ波加熱のW効果で乾燥時間を大幅に短縮できることも大きな特長です。
ここまで、加熱方法とそれらを搭載した乾燥機の例についてご紹介しました。
次回は、乾燥機選定のポイントについてご説明します。
まとめ
この記事では、加熱方法の種類と、それらを搭載した乾燥機についてご説明しました。
物を乾燥させるためには、これだけ多くの加熱方法が存在するということがお分かりいただけたかと思います。
しかし、
「どの乾燥機が、自分たちの製品に合っているのかが分からない」
そう考える方も多いのではないでしょうか。
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