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お客様インタビュー:多様な人材が活躍できる安心・安全なものづくり現場を目指して【クロレラ工業株式会社】


皆さんはクロレラをご存じでしょうか。
ビタミンやミネラルなど様々な栄養素をバランス良く含んだ生き物として知られており、その特徴を活かして健康食品や医薬品のほか、農業、水産業などさまざまな業界で広く使われています。

そんなクロレラの専門メーカーとして、世界に先駆けて研究開発を進めてきたクロレラ工業株式会社が、数十年ぶりに新たな製造プラントを新設しました。

なぜ今、新工場を立ち上げるに至ったのか。
このプロジェクトを推進してきた執行役員生産副本部長の北島 佳孝様に、新工場建設の経緯や現在の稼働状況、今後の展望などについて伺いました。

 

クロレラ工業株式会社 https://www.chlorella.co.jp/

クロレラ工業株式会社は、1964年に世界ではじめてクロレラを企業化したパイオニアメーカーです。培養から製品化まで全ての工程を自社工場で一貫生産しており、当社独自のチクゴ株と、その研究開発をベースにつくられた高品質なクロレラは、福岡県筑後地方で作られていることから、「CHIKUGO MADE」クロレラとして世界で高い評価を受けています。

 

健康食品という、人の口に入るものをつくるメーカーとして安心・安全な設備をつくりたい

―新工場設立の目的とそのコンセプト

―なぜ大川原製作所に生産ラインの設計・製造を任せたのか

―設備設計を進める中で、苦労した点・気を付けた点は

―設備設計には現場作業者も参加

使いながら修正する。生産に関わる人全員でつくり上げていく設備とは

―設備の稼働状況

―現場作業者からの反応

多様な人材が活躍できる環境づくりを目指したい

―今後の新工場での生産展開について

―今後の大川原製作所との取り組みについて

インタビュー後記

健康食品という、人の口に入るものをつくるメーカーとして安心・安全な設備をつくりたい


―新工場の立ち上げを推進して来られた、クロレラ工業株式会社執行役員生産副本部長 北島 佳孝様

 

―今回、どのような目的やコンセプトで新工場を立ち上げられたのでしょうか

大きく分けて4つの目的がありました。
老朽化した文字に設備の新調、現行生産ラインの改良、衛生管理の強化、そして人材不足への対策です。

我々の工場では、クロレラ粉末を乾燥させるためにスプレードライヤーという設備を使っていますが、従来の設備は40年以上前に製造されたもので、老朽化が進んでいました。
それに加え、周辺機器も老朽化していたことから、まとめて一新しようと考えたのが最初の始まりです。

また、クロレラエキスの生産ラインを改良したいという想いもありました。
健康食品という、人の口に入る商品を提供するメーカーですので、これまでの工場においても十分な衛生管理を行ってきましたが、新工場では一層の改善を図り、より効果的な衛生管理が可能となるよう検討しました。
そこで、CIP洗浄 *1 ができる設計にしました。洗浄時に、なるべく作業効率を落とさないよう、工程ごとに順番に実施できるようやり方にも工夫しました。

またより安心・安全な製品の提供をするために、既に持っている健康補助食品GMP認証 *2 に加えて、FSSC 22000 *3 を取得することも視野に入れながら検討を進めていきました。

*1 CIP洗浄:Cleaning In Placeの略。洗浄剤などを用いて装置内部を自動洗浄するシステムであり、装置の分解が不要。
*2 GMP認証:Good Manufacturing Practice の略。原料の受入れから最終製品の出荷に至るまでの全工程において、「適正な製造管理と品質管理」が担保されているものに対して認証される。
*3 FSSC 22000:より確実な食品安全管理を実践するための国際規格。食品安全の向上と消費者の信頼強化を目的とした民間団体(GFSI)によって承認される。

あとは、人材不足への対策ですね。
ここ最近、本当に人員採用が難しくなってきています。加えて、人の勘や経験に頼った生産体制が従来から長く続いています。
このタイミングですべてを刷新し、少ない人員でも従来と同じかそれ以上の生産量が確保できる体制を整えたいと考えました。

 

―御社にとっても大きな転機になったと思います。なぜ今回、大川原製作所に生産ラインの設計・製造をお任せいただいたのでしょうか?

生産というのは、設備単品でできるものではなく、一つのラインにしないと意味がありません。
そのため、一つひとつの設備をどのように連結するかが大切だと考えていました。

そのため、ライン設計を任せる企業には、
・生産ラインに組み込まれる各種機械について理解があること
・さまざまなメーカーの設備を取りまとめて全体の設計ができること
を求めていました。

そしてその条件に合致したのが、大川原製作所さんだったんです。
食品生産設備の実績もあるため、生産ラインに対する理解も深いだろうということでお任せすることにしました。

大規模な生産ラインを別々の会社の装置で組んでいくと、つなぎ部分の配管径がバラバラということが良くあります。
加えて、連結するときにならないと合うかどうかも分からないですし、仮につなげられたとしても、ラインが不格好になってしまうことも多いです。
また、余計なスペースが生まれる原因にもなり得ます。

今回、大川原製作所さんに全体を取りまとめてもらったことで、そのような問題はありませんでした。我々にとっても非常に大きかったですね。

 

―設備設計を進める中で、苦労した点・気を付けた点などがあれば教えてください。


―設備のタッチパネル。ボタンの位置、高さ、色などを他社のタッチパネルを含めて調整し、作業者が間違わない仕様を盛り込んだ。

大きく分けて2点あります。

一つめが、食品工場特有の状況を踏まえた上で設備設計をすることです。

・食品工場としての理解をどれだけしてもらえるか
・理解が足りない場合は、どこまでフォローしてもらえるか

これらが一番苦労した点でもあり、一番大事にした点です。

クロレラの生産は特殊で、各工程をどれだけ理解できるかが非常に大切です。ただ設備を入れれば良いというものではありません。
そのため、設備設計においては特に時間をかけて議論を重ね、認識のギャップを埋めていくことに力を注ぎました。
二つめが、製品の品質を保つことです。

生産にかかるコストはもちろん大事ですが、私たちが最優先するのは、やはり品質です。
品質を高めるには、安定して作業できること、すなわち作業者が間違わない仕様が求められます。
間違いは事故につながる可能性もあるため、ヒューマンエラーを防止する策も時間をかけてすり合わせを行っていきました。

必要に応じて、作業者にも仕様設計の場へ入ってもらいましたね。
パネル内の色、配管構成、作業を想定した操作ボタンの位置や高さなど、細かいところを一つひとつ詰めていきました。

設計者は、通常の製造工程のみを想定して考えますが、作業者は特殊なケースを想定します。
そのため、設計者が見落としがちな「この状況でこの操作はできない」ということにも気づけるんです。

 

―設備設計の場で、現場作業者も入って協議することは珍しいと思います。

使う人の意見を取り入れないと、後から仕様を修正することにもなりますし、ひいては作業ミスの発生につながってしまいます。

また、「自分たちが関わってつくり上げた設備」という意識が、作業者にも育つと考えています。
人の口に入るものを生産している以上、品質に関わる部分は譲れないですね。

使いながら修正する。現場に関わる人全員でつくり上げていく設備とは


―生産のインライン化を実現したエバポール(濃縮装置)

―実際に設備を稼働してみて、効果はいかがでしょうか?

スプレードライヤーの生産能力には満足しています。従来品は非常に古く、生産条件の微調整ができませんでした。
一方で今回の設備は、回転数や温度の微調整が可能で、さまざまな性質の粉末を生産できるようになりました。

そのおかげで、つくったものに対してみんなで意見を出し合い、議論しながら修正をかけていけるようになりました。これは良かったですね。
ゆくゆくは、新製品へ発展させられる可能性もあると考えています。

また、操作性も良いと思います。作業者が一生懸命取り組んでくれているのもありますが、そもそも操作が身につきやすい設計になっています。
ただそれでも、実際に稼働させると改善点が見えてくるもので、既に何か所か直してもらった箇所もあります。
そのような修正に対し、大川原製作所さんが臨機応変に対応してくださるのも良かった点ですね。

また今回、エバポールという濃縮装置を新たに導入したことで、生産をインライン化し生産量を時間管理できるようになりました。
そのおかげで、作業時間を従来の3分の2まで削減できています。

人材不足に対する打ち手としても効果的でしたし、人材育成の観点からも有効でした。
若い世代にとっても「設備投資・設備更新」を学ぶ良い機会になったと感じています。

 


―非常に大型なスプレードライヤー。安定した生産のためには日々の点検が欠かせない。

―現場からの反応はいかがですか?

従来の設備が40年以上前のものと非常に古かったため、「良くなった」という声は正直出ていません。
そもそも現場環境を良くするために新たな設備を導入しているので、正直なところ良くなって当たり前なんですよね。

スプレードライヤーは非常に大きな設備です。
そして、20mほどの高さにある部品を、天候関係なく毎日作業者が点検する必要があります。
熱を持つこともあるうえに、かつては屋外作業のため厳しい作業環境でした。加えて、屋外だと設備の傷みも激しいため、このタイミングで屋内へ移すことにしました。

作業環境は改善できたかと思います。きっと作業者たちも「良くなった」と感じているのではないでしょうか。
今は慣れない作業に不満も出ていますが、1年ほど経った頃には良さを実感しているのではないかと思います。

またこれまで、クロレラ工業の製品を御愛用いただいていますお客様中心に、工場見学のご案内をしていました。
今回、設備を屋内へ移したことで、より間近で生産の様子をご覧いただけるようになりました。
安心・安全な環境で生産されているということを、直接お客様に伝えられるようになったと感じています。

多様な人材が活躍できる環境づくりを目指したい


 ―(左から順番に)クロレラ工業株式会社執行役員生産副本部長 北島 佳孝様、大川原製作所営業本部長 菅谷、同営業企画 牧野

 

―今後の新工場での生産展開について、考えをお聞かせください。

我々の中では、食を通じて、クロレラをもっとさまざまな面から使ってもらいたいという想いがあります。
そのために、安心・安全で多様な人材が活躍できる環境を作りたいと考えています。

大川原製作所さんを見学した際、女性や若い人たちが活躍している様子を見て、とても刺激を受けました。
クロレラ工業でも少しずつ女性作業者を増やしており、半分近くが女性という工程も出てきています。
最近では私も、設備をつくる際に「この操作は女性でもできるか?」を意識するようにしています。

また、昨今の気候変動による気温上昇の影響で、今まで以上に現場環境が厳しくなっています。
そのため、作業環境のさらなる改善や衛生管理の強化は、引き続き取り組んでいきたいと考えています。

 

―今後の大川原製作所との取り組みについては、どのようにお考えでしょうか。

より良い生産の仕組みづくりに向けて、これまで以上に連携を強めていきたいと考えています。

操作性のところでも触れましたが「設備は入れて動かしたら終わり」というわけではありません。
使ってみて初めてわかる事がありますし、修正点も出てきます。

そのような、我々からの意見を受け止めてくれるところには期待しています。
今でも、設備をつくる立場から見て、修正するべきではない点や新たな提案などをいただいており、良い関係で連携ができていると感じています。
これからも、そのような取り組みを継続していきたいと考えています。

また、さらなる効率化や省人化を目指していきたいため、より一層のサポートをお願いしたいですね。
大川原製作所さんは、最新の生産システムや生産方法に対する知識が豊富だと思います。それらを活用したサポートに期待しています。

インタビュー後記

「古くなったものを新しくする。」
言葉にすると簡単ですが、それを実行するには大小様々な課題が出てきます。

それらの課題を乗り越えていくには、目指すべき姿や実現したいことなど、未来のビジョンを明確にしておくことが大切である
北島様のインタビューを通じて、強く感じさせられました。

クロレラ工業様の新工場建設を通じて、当社も多くのことを学ばせていただきました。
これからも、日本のものづくり現場を活気づけるため、さまざまな取り組みを続けてまいります。

大川原製作所は、食品メーカー様向けライン生産設備の構築を得意としております。
ご満足いただけるような生産設備を、一緒につくり上げていきませんか?

生産現場を熟知したメンバーが、しっかりとサポートさせていただきます。
われわれにお任せください。

どんな小さなことからでも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

 

 

クロレラ工業株式会社様の新工場建設にあたっては、西華産業株式会社様と当社での共同提案により
生産ラインの設計、製造をお任せいただきました。文末ながら西華産業株式会社様に厚く御礼申し上げます。

 

 

この記事で紹介した、装置について詳細を知りたい方は、以下のリンクから製品ページをご覧ください。


遠心式薄膜真空蒸発装置 エバポール

 



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